今回は、長戸製陶所(ながと・せいとうじょ)についてご紹介します。

長戸製陶所があるのは、愛媛県伊予郡砥部町。
ここは、言わずと知れた焼きものの里で「砥部焼(とべやき)」が作られています。
適した良質な土が採れたことから多くの窯元が軒を連ね、今も100軒ほどの窯元があります。
個人作家さんや家族経営の窯元など運営形態は様々ですが、ギャラリーが併設されている窯元も多いのでふらっと立ち寄ることができます。

ここで作られているうつわの多くは、石ものと呼ばれる磁器。
陶器(いわゆる土もの)よりもガラス質を多く含んでいるので、指で弾くとカンカンと高い音がします。
白磁の綺麗な明るさは、使い手の心もパッと明るくしてくれて、つるんとした使いやすさは一度使うと手放せず、日常使いに最適です。
長戸製陶所は、3代目の長戸哲也さんと純子さん。そして4代目を継ぐ歩夢さんの3人で工房を営んでいます。

それぞれ作家としても精力的に活動されていて、作風は異なりますが、長戸家のみなさんが作るうつわからは、砥部の大地が育んだのびやかな感性と包み込むような優しさを感じることができます。
私の記憶には「砥部=優しさ」で思い出がインプットされていますが、それくらい砥部の方々は優しくて、穏やかで、人情にあふれるあったか~い町でした。
長戸製陶所が約7年前から取り組んでいるのが、古砥部文の復刻です。

古戸部文とは、江戸時代に描かれた文様のこと。
絵柄は、菱文、花垣文、なずな文、小梅文、蝶文などがありますが、伝統的な落ち着きが今の暮らしにマッチして「世代を問わず使える」と人気です。
砥部焼は、特徴のひとつに「厚手でぽってりしている」と言われることがありますが、長戸製陶所のうつわはそこまで厚くはありません。“使いやすい重さ”です。

そしてこのたび、古砥部文に新たな文様「花格子文」が仲間入りしました。
花と格子のシンプルなコントラストが可愛い文様です。

丁寧なのに、肩肘張らない柔らかなタッチが長戸製陶所の魅力ですが、花格子文はさらにのびやかなタッチで可愛さに磨きがかかっています。
花垣文と並べてみると、こんな感じです。(※左が花垣文、右が花格子文です)

茶椀のサイズは2種類で(写真は小さいサイズです)、 高台はいずれも広めで安定しています。
これらの茶碗は「くらわんか椀」と呼ばれており、その昔、漁師たちが揺れる船の上で使ったと言われており、持ちやすくて安定感があるのが特徴です。
そんな長戸製陶所の古砥部文を取り扱ってくれているのが、こちらのお店。

秋田県由利本荘市の「暮らしの道具 紅茶とみつばち」さんです。
週末OPENの小さなお店ですが、店主の愛情と優しさ、良いモノを届けたいという想いが感じられる本当に素敵なお店です。
新たに登場した「花格子文」も取り扱ってくださっていますので、秋田にお住いの方はどうぞよろしくお願い致します。お手にとってご覧いただくと、うつわの魅力がさらに伝わると思います。
・ 暮らしの道具 紅茶とみつばち Instagramはこちら→@ryo_mi_8
秋田県由利本荘市東梵天67−1 【Open 金土日 10:30 〜 17:30 ※臨時休業あり】
また、昨年出版された「暮らしの図鑑 民藝と手仕事」翔泳社(2020年)でも、長戸製陶所についてご紹介していますので、興味のある方はお読みいただけたら嬉しいです。

ちなみに、こちら(↑)のコラム後半で紹介している砥部の甘酒はこちらです。
協和酒造株式会社の「あまざけ」ですが、クセがなくほんのり甘くて最高に美味しいんです。夏を乗り切る「飲む点滴」とは、まさにこのこと!

協和酒造のオンラインショップに「初雪盃 3本セット 酒蔵のノンアルコール甘酒」アップされていたので、興味のある方は見てみてください。
・長戸製陶所 http://www.tousaigama.com/
・翔泳社「暮らしの図鑑 民藝と手仕事」 https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798165455
・酒蔵カフェ はつゆき https://www.hatsuyukihai.jp/