2021年7月1日、秋田手仕事ワークショップ「みごほうきを作ろう」を開催しました。

講師は、藁細工を制作している武田謙一さん。
由利本荘の農家に生まれ、小さな頃から俵作りを手伝うなど藁細工に慣れ親しんで育ったという武田さん。服飾関係などの職種を経て、定年後に独学で藁細工の勉強を本格的に始めました。
普段は、みごほうき、しめ飾り、干支、鍋敷きなどの藁細工を制作しています。
ワークショップの会場は、大仙市にある樫食堂さん。

このワークショップを企画する時から、みごほうきを作るならココで!と、決めていました。
田んぼの心地よい風を感じながら、美味しいごはんを出している場所で、稲わら仕事を体験して欲しいと思ったからです。
今は田植えも終わり、苗がすくすく成長する時期。お店の前には、美しい緑のじゅうたんが一面に広がっていました。

みごほうきとは、稲藁の葉や周り部分を取り除いた部分(芯と穂先の部分)で作られたほうきのことで、柔らかな掃き心地が特徴です。
みご(実子)は、程好い硬さでよくしなるので、日用使いのほうきとして古くから重宝されてきました。
材料として用意されたみごは、こちら。

毛並みが本当に美しいです。
田植え~稲刈り~天日干し~選別~材料の下準備という長い工程を経て、ようやく作られた材料なので、感謝しながら使わせていただきました。
ツルツル&しなやかな手触りに癒されながら、30本と15本ずつ束ねて穂先を合わせていきます。

参加者のみなさんも真剣な眼差しで、みごを数え、穂先を揃えていきます。
「こんな細かい作業があったのね…」という声が上がるくらい、繊細な作業です。
次は、紐で括る作業。巻き結びという結び方に挑戦です。

この結び方、簡単なようで意外に難しいので、習得するまで少し時間がかかりました。
私は取材の時からもう何度も聞いている結び方なのに、未だに覚えられずにいましたが、このワークショップでようやく習得することができました。
ほうき作りにとって、紐結びは大切な基礎。どこでどう結ぶかが、出来上がりの美しさを左右します。

結び方を習得したら、束ねたみごを組み合わせながら、全体の形を作っていきます。
ボリュームはどうしようか? バランスはこれでいいかな? 柄(持ち手)の長さはどれくらいにする? などを確認しながらくくる作業が続きます。
そして、たっぷり2時間かかって、ようやくみごほうきが出来上がりました!

シンプルで可愛い!みごほうきたちの完成です。
満足感に浸ったあとは、樫食堂でランチをいただきました。
いつぶりの外食だろうか?というくらい、私はかなり久しぶりの外食でしたが、素材の味を活かしたバリエーション豊かなお料理が本当に美味しくて、骨身に沁みました。あぁ幸せ~。

今回の参加者は5名でしたが、皆さんものづくりが好きな方ばかりだったので、武田さんの話をうんうんと興味深々に聞いてくださり、私のつたない進行も軽く笑い飛ばしてくださって、本当に楽しい時間を過ごすことができました。
気さくな性格で、分かりやすく教えてくださった武田さんにも感謝です。

手仕事の技って、人に教えたり、伝えることが意外に難しいのです。
一流の職人さんなら上手に教えられるかというとそういう訳でもなく、自分で作ることと教えることは「似て非なるもの」なので、細かいところまで気を配りながら丁寧に教えてくださった武田さんの姿に、実は密かに感動していました。
武田さんにお願いして良かったなぁ~と。
参加してくださった方も、『実際に作ってみると手間がよく分かって愛着が増す』と言ってくださったり、『手仕事は知恵と人間の生きていく術が詰まっている様に感じました』と後日メールを送ってくださったり、それぞれ感じてもらえる部分があったようで、ホッとしています。

秋田に移住して3年11ヶ月。
焦る気持ちが先行してしまい、今まで歯車がうまくかみ合わないこともありましたが、こうして無事にワークショップを開催することができて、ようやく地に足をつけた活動がスタートできたような気がしています。
次回のワークショップは、9月に「秋田杉のモビール作り」を予定しています。詳細が決まりましたら、こちらでご案内いたしますので、どうぞよろしくお願い致します。