フリーペーパーvol.3で、こけし工人の高橋雄司さんを特集してから、こけしにまつわるお話をいただくことがチラホラあります。
高橋さんのお人柄とこけしに惹かれて、その魅力を少しでも多くの方にお伝えしたいと思いご紹介していますが、残念ながら私はこけしの蒐集家でも研究者ではありません。
こけし界には熱烈な愛好家や蒐集家、優秀な研究者が多くいっらっしゃって、そんな方々の活動を、いつも尊敬の眼差しで見つめています。
そんな私のところに、先日、秋田市に住む91歳の女性から「うちのこけしを見て欲しい」と、お電話いただきました。
いつもだったら上記の理由でご丁寧にお断りさせていただくのですが、お電話をいただいた女性の年齢のこと、意を決して電話してくださったこと、長い年月をかけてこけしを集めてきたことなどのお話を聞いてみるうちに、お会いしてみたくなり、後日、ご自宅にお伺いさせていただきました。
玄関からすぐの立派な和室の床の間には、驚くほどた~~~くさんのこけしたちが並んでいました。

今から20年以上前に、こけしが好きな友人と各地を旅行して集めたものだそう。ひとつひとつに思い出が宿っているので、今まで集めたこけしは殆ど手放すことなく大切に飾っていたそうです。
しかし、御年91歳。
「この先、自分にもしものことがあったら、こけしも処分されてしまうから、その前に好きな人にもらって欲しい…」というのが、私に電話をくれた本当の理由でした。

さて、どうしよう…?
わが家は賃貸だし、6畳の仕事場に200本のこけしが入るだろうか…?
美術館などに収蔵した方が、こけしたちにとって良い道が拓けるんじゃないだろうか?
と、色んな思いが頭を巡りました。

でも、その女性と一緒にアイスを食べながら、戦争のことや満州での出来事、生まれ故郷のこと、秋田のこと、こけしとの思いでなど色んな話をしているうちに、私の気持ちも固まりました。
きっと、これはご縁なんだ、と。
コレクターでも専門家でもないけれど、私にできることがもしかしたらあるかもしれない、と。
コレクションされていたこけしは東北各地を代表する有名なこけしが殆どで、その表情も本当に可愛らしくて、見てる私がニコニコ笑顔になってしまうものばかり。
これはきっと、こけしが導いてくれたご縁に違いない♡と思いながら、ありがたく受け継がせていただくことにしました。

そう言えば、ナウビレッジを立ち上げたのも、愛媛で大漁旗をつくる職人さんに「あんたも、なんかやったらえーやん」という、言葉がきっかけでした。
ひとつの出会いや、小さなきっかけが、未来の自分を作っているような気がします。
譲り受けたこけしたちは、女性の思い出と共に大切に保管していこうと思います。

そんなこんなで、今日も仕事場は、こけしたちに埋め尽くされています(笑)
さぁ、どう整理しよう?