【作り手に聞いてみました】八橋人形の横綱について

現在開催中の展示会「DEDICATE 東北の手仕事 @コハルアン」のDMにも載せていただき、ナウビレッジのフリーペーパーいま、秋田村から vol.2」の表紙も飾った八橋人形の横綱「横綱」。

サイズは2種類あり、写真(↑)は小さい方ですが身長は27㎝。土人形では大きい方で、存在感があります。

でも土人形のお相撲さんって、珍しいですよね。

お相撲さんがモチーフの郷土玩具に出会ったのは、私もこれが初めてだったので、新鮮な感覚で可愛さに魅了されたわけですが、次第に、なぜ相撲なんだろう? なぜ横綱なんだろう? という素朴な疑問が湧いてきました。

ということで、作り手の梅津秀さんにお話を伺ってみました。面白い発見もあったので、お聞きしたことを(ご本人の許可を得て)こちらでご紹介します。

題して「作り手に聞いてみました!」。

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今村)梅津さん、こんにちわ

梅津)はい、こんにちわ

今村)横綱の土人形についてちょっとお聞きしたいんですが

梅津)はい、どうぞ

今村)横綱の土人形、2年前かな、すごい可愛いなぁと一目惚れして、今も大好きな土人形のひとつなんですが、お相撲さんがモチーフになった土人形って、珍しいですよね?

梅津) ん~、そうかな。わりと作られてるんですよ。

今村)ええーーそうなんですか!?(・□・;)

梅津)えっとね、花巻人形(岩手)とか、堤人形(宮城)とかにも、お相撲さんの人形はあるんですよ。

今村)そうなんですか~、知らなかったです ~(;´д`) トホホ。なぜ、相撲がモチーフになったんでしょう?

梅津)そうだねぇ、やっぱり相撲は国技だからね。東北はね、相撲が盛んで有名な力士も出てるんですよ。大関清國とかね。

今村)そうなんですか、清國(メモメモ…)。ちなみに、八橋人形の横綱はシュッとした端正なお顔立ちだなぁと思いながらいつも眺めているんですが、制作で気を付けていることとか、意識していることってありますか?

梅津)トモさん(先代の作り手さん)の絵付けはね、顔の眉毛がゲジゲジだったの(笑)。だから眉毛をシュッと描くようにしたり、顔をキリっとさせて、なるべく男ぶりを上げるように意識してるかな。

今村)ほぅ、確かに。目が凛々しいですもんね。ゲジゲジ眉毛の横綱も見てみたかったですが(笑)。この土人形は、どんな方に届けたいですか。

梅津)やっぱり相撲が好きな人に見てもらいたいな。全国にいる相撲ファンに届けば嬉しいなぁと。実はね、工房に寄贈されたもうひとつの横綱があって、かなり昔のものなんだけど、それがすごく良い表情しているんだ。だから次回は、その表情を絵付けに取り入れたいと思ってるんだ。

今村)へぇー、そうなんですか。同じ型でも、絵付けひとつで印象がガラリと変わるのが土人形の面白さですからね。楽しみにしています!

梅津)はい、ありがとう

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突然の質問にも関わらず、丁寧に答えてくれた梅津さん。常に良いものを作り出そうとする熱意にあふれているので、お話するたびに元気と勇気をいただいています。

お相撲さんがモチーフになった土人形は、さほど珍しいわけではない(東北ではよく見かける)という事実も知ることができました。

そして後日、名前が上っていた清國について調べてみたのですが…、思わぬ発見がありました!

清國は昭和44年に優勝した力士(最高位は大関)だと分かりましたが、その師匠にあたる照國という力士が、なんと八橋人形の横綱にそっくりだったのです!

佇まいも雰囲気も、まさにそのもの!

横綱 照國

照國は第38代の横綱で、秋田県湯沢市のご出身。23歳で横綱になりましたが、これは当時の最年少記録だったそうです。

照國が活躍したのは昭和17年頃なので、八橋人形のモデルになったかどうかは分かりませんが、秋田のヒーロー的存在の横綱を讃えようと作られたなら頷けます。作られた土人形が「お相撲さん」ではなく「横綱」だった理由も、合点がいくのです。

秋田の相撲の歴史を遡ると、江戸時代の庇護奨励(心身鍛錬するための実践用武術)としての相撲、富国強兵の国策としての相撲、娯楽としての相撲、五穀豊穣や無病息災を願う奉納としての相撲など、時代や目的によって様々な役目を担いながら歩んできたことが伺えます。

こんなに多面性を供えた競技は、おそらく他にはないでしょう。歴史や暮らしと密接に関わりながら、今に至ることを再確認できました。

郷土玩具は、地域の歴史や文化に根を深く下ろしながら作られてきたので、由縁を調べていくと今まで知らなかった史実や風習に出会えることがあります。

想像を巡らせながら史実とリンクできるのは、郷土玩具ならではの面白さであり、奥深さです。

今回の照國については私の憶測に過ぎませんが、八橋人形のおかげで秋田の歴史をまたひとつ知ることができました。

年号が苦手で歴史にはかなり疎いのですが、郷土玩具や手仕事など好きなことを切り口に、秋田の歴史を学んでいけたらと思っています。

※分厚い本と睨めっこしながら秋田の相撲について調べていた私を、横からじーっと見つめて(たぶん応援してくれて)いた横綱さん。優しいくて頼りがいがありそうなところが好きです(笑)。

※参考図書「秋田懸相撲史」秋田県相撲連盟

  

コハルアンで「東北の手仕事」展を開催中(~3/21まで)。横綱も出展しています。

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