【秋田折々】柿を吊しながら思い出したこと

「そうだ、干し柿を作ろう!」とふいに思い立ち、吊るし作業を始めました。

愛媛に住んでいた頃は、干し柿を作ることが毎年冬の恒例でしたが、子どもが生まれてからはそんな余裕もなく、実に4年ぶりの作業です。「また干し柿を作れる日が来るとは~」と、小さな幸せをかみしめながらの冬支度。

ルンルン気分で産直で買った渋柿を袋から出してみると、紐をかけるための小枝が切られていて「え、、これじゃ吊るせない、、」と、目の前が一瞬暗くなりました。仕方ないので、柿の側面に割り箸をブスッと刺して紐をかけることに。

無心で柿の皮をむき、割り箸をひたすら突き刺します。思ったとおり見た目は美しくありませんが、これが意外にも、湯通しするには楽で作業が効率良くできました。割り箸の端を持って沸騰する鍋に入れ、数秒したらそれをひょいと引き上げればいいだけ。年に一度の(しかも4年ぶりの)慣れない作業だったので、勝手が違うと焦ってしまいましたが、やっぱり思い込みは禁物ですね。むしろ新しい世界が広がったし、小さなことでも経験って大事だなぁと思いました。

その後、ひたすら紐で括っていく作業をしていたら、思い出したことがあります。

夏に、刺し子作家の小松柾子さんが自宅に遊びに来てくれたのですが、その時に藁で作った「卵つと」をプレゼントしてくれました。これは東北地方の伝統的な藁細工(容器)で、卵を割れずに運ぶために作られたもの。藁で卵を包み込むように編み、取っ手が付いています。

それを見て「包む ~日本の伝統パッケージ~」という展覧会を思い出しました。かれこれ10年ほど前に目黒区美術館で開催された展覧会で、グラフィックデザイナーの岡秀行さんが日本各地から集めた「伝統パッケージ」紹介した展覧会だったのですが、当時埼玉で学芸員になり立てだった私は目から鱗! 展示会場の中を何往復もしながら、各地に伝わる生活の知恵と自然観に大興奮したものです。特に東北の藁細工は衝撃で、展示してあった「卵つと」の自然美と高いデザイン性に感動して泣いてしまったほど。

それから学芸員として地域の職人さんに焦点をあてた展覧会を企画させてもらったり、本を出版させてもらったり、愛媛に移住後はNowvillageの活動を始めましたが、いつも私の根底にはあの展覧会で見た衝撃と感動があったように思います。

今回私が作った吊るし柿は、展覧会で見た美しいそれらとはほど遠く笑っちゃうくらいあべこべな形の仕上がりですが、あれから約10年。いつの間にか自分も東北に住み、まさか大切な人から「卵つと」をプレゼントしてもらうとは…!不思議なご縁を感じずにはいられません。

40歳になり体の衰えをあちこちに感じていますが、昔も今もこうして手仕事の世界に浸り、好きなことに向き合える日々が送れているのは本当にありがたいこと。支えてくれている家族やお世話になっている方々のおかげです。

さぁ果たして、秋田での初めての干し柿は無事できあがるのでしょうか。残念ながら柿を干してから雨の日が続いていますが、念を送りつつ、しばし見守りたいと思います…。おいしくな~れ!(カビるなよ~!!)

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